ヘッタクソで意味不明な怪談話

コンタクトレンズ屋に併設された眼科で働く眼科医、ケイ。

勤めて5年。畳三畳ほどの小さいブースに仕切りがカーテンといった簡素な作りの職場で、ただ淡々と同じような診察を繰り返す。

 

4番にお入りください。

白いところに顎を乗せてください。

ちょっと失礼しますね…。

下見てください。

上見てください。

何か気になることはありますか。

乾燥ですね、目薬出しておきましょう。

かゆみがあるんですね、目薬出しておきましょう。

ドライアイですね、目薬出しておきましょう。

目がゴロゴロするんですね、目薬出しておきましょう。

 

 

ただ、その日は違っていた。

 

4番にお入りください。と何千回と繰り返した言葉の後で入ってきた患者には、なんとなく人間離れした奇妙な雰囲気がある。ケイはさっきまでの眠気が覚め、嫌な予感とともに診察を始めた。

 

 

 

 

「ニャー」

 

 

 

ケイは、はっとした。

これまで数えきれない数の患者を診てきたが、「ニャー」と言われたことは一度もない。

 

 

 

「ニャーゴ」

 

 

 

相手はケイの戸惑いを知ってか知らずか、構わず続ける。

 

 

「ゴロニャア」

 

 

 

ケイは動転したものの勇気を出して続けた。

 

「目の状態を見てみましょう。白い台に顎を乗せてください」

 

いつも自動的に繰り返している言葉だが、今回はちゃんと考えながら発する。

患者は顎を白い台に乗せ、機械を両目でのぞき込むようにして目を見開いた。

 

「では診てみます…、下を向いてください…」

 

 

 

「ミャア」

 

 

 

…あっ…!!

 

 

処方箋の上で指が震える。気づけば背中がじっとりと汗ばんでいる。

 

 

 

ば、化け猫ー!!

 

 

 

 

ニャンニャン、ニャンゴー

 

ケイの目がみるみる恐怖の色に染まる。

 

 

ゴーロゴーロ!!

ミャーオ!

 

シェーッ!!!

 シャッシャッシャッ!!!

 

 

 

 

それ以来、この眼科医の姿を見たものはいないという…。

 

END

 

 

以上、ヘタクソで意味不明な怪談でした。書いていてとても楽しかったのでたぶんまた書いてみます。